機動戦艦ナデシコ

Digital Fairy Tales

〜in "The prince of darkness”〜

作:たのじ

第四話 開かれた『扉』(後編)

<2201年八月某日 今日は、艦長が荒れ模様>
 一段落ついてみると、何とまぁえらい状況になったもんだ。
 まさか、『あの』草壁が生きているとは――正直、可能性はあると思っていたが――、それだけでも大事だけど、ここまで大がかりに手はずを整えて、またぞろおっぱじめるとはねぇ。
 ”アマテラス”が完全に奴らの手に落ちることだけは、あの黒い奴の活躍もあって防ぐことが出来たけれども、奴らが”遺跡”を見付けてたとは……。あの美人の元艦長さんとは面識があっただけに、艦長との関係を知っているだけに、正直いたたまれなかった。
 ……ま、それを顔に出すような俺じゃないけどね。俺のキャラにも合わないし。
 今は気を取り直して、地球に着いてからのことでも考えますか。偶然のおかげで、火星で会ったあの気の強いねーちゃん――リョーコ、っていったっけ?――にも再会できたことだし、お茶にでも誘ってみますかね。
 ……ところで、艦長とカイト、あれからきちんと仲直りできたのか?

タカスギ・サブロウタ



「てめぇら、待ぁちやがれー!」
 リョーコの目の前に、”アマテラス”第十三番ゲート――存在しないはずのゲート――が黒々とした口を開けている。無論、リョーコのエステバリスのデータにも、その存在は記録されていない。そこには、ほんの少し前に、ここを襲撃してきた黒い機体と、宇宙軍の、しかも見覚えのあるナデシコBの識別コードを発信していた白い機体が飛び込んでいった。
 黒い機体はリョーコが獲物と認めた相手であり、古巣(と彼女は思っている)のナデシコの機体だからと言って、譲る気はさらさらない。リョーコは、ほんの僅かだけ遅れて、十三番ゲートに飛び込んだ。彼らの後を追って、開口部の奥に見える縦穴に降りようとする。
 しかし、そこで彼女は激烈な歓迎にさらされた。薄暗いゲートの中に、見覚えのあるステルンクーゲルのシルエットが幾つも立ち上がり、砲撃を開始したのである。無論、目標は赤いエステバリスカスタムだった。
「うぉわったぁ!? 何しやがんだこんちくしょーッ!!」
 三体のステルンクーゲルは、全く躊躇した様子もなく、レールガンの弾丸を撃ち込んでくる。コロニー内部だということもお構いなしだ。並の機動兵器乗りならば、三十秒と持たずに四散していただろう。が、今の相手はリョーコである。
 リョーコのエステバリスは、半瞬にも満たない驚きから立ち直ると、手近な一機に至近距離からラピッドライフルを斉射した。レールガンは、威力はともかく連射能力でラピッドライフルに遙かに劣る。一射目をかわされたステルンクーゲルは、為す術もなく弾丸の嵐の中でスクラップと化した。
 ――残る二機も、最初の一機の後を追うのに、五分とかからなかった。
 
 
「存在しないはずのゲートに、情け容赦なしの無人機の見張り……。こりゃ、統合軍うちもかなり後ろ暗いことやってんな……?」
 三機のステルンクーゲルをスクラップに変えたところで、リョーコは芽生えた不審感を隠そうともせずに呟いた。このまま奥に進んで良いものか、流石の彼女も判断に迷う。と、そこに通信が飛び込んできた。彼女の部下からでもなく、先程から妙に静かなアマテラスの管制でもなく、ナデシコB、ルリからの通信だった。
『……やっと繋がりました。お久しぶりです、リョーコさん』
「ああ、二年ぶり。元気そうだな」
 二人の挨拶は、互いに顔を合わせなくなってからの年月がまるで無かったかのような、自然なものだった。
『……相変わらず、流石ですね』
 リョーコのエステバリスを通して、周囲の状況を見ているのだろう。ルリが感心した――といっても、普段とあまり変わったようには見えないが――様子を見せる。
「へっ。無人機倒したって、自慢にゃならねえよ」
 何事もなかったように、リョーコはルリの言葉を受け流す。
『ところで、カイトさん、そちらにいませんか?』
「あぁ? あいつが、どうしたって? ……もしかして、さっきの白いのがカイトの機体か!?」
『……やっぱり、そこですか……。しかも、リョーコさんより、先……。ということは……』
 ルリは、何かに思い至ったのか、視線を僅かに逸らして何事か呟く。
『そのために送り込まれた……。最初から、知っていた……?』
「おいおい、どーしたよ? あいつのことなら、お前が一番知ってんじゃねーか」
『あ……、すいません』
 リョーコの言葉のニュアンスに、頬をほんのりと染めながら、ルリは自分の思考から現実に戻った。リョーコは、悪意のない笑みでウィンドウの中のルリを見つめている。
『ここから先は、さっきみたいなトラップはありません。こちらから案内します』
「おう、サンキューな」
 エステバリスのコクピット内に、ナデシコBから送られてきた、内部図が表示される。十三番ゲートから、その奥にあるものまでの経路が、はっきりと記されていた。それに従って、今度は静かにエステバリスが動き出す。
「……って、ちょっと待ておい! お前、人んちのシステム、ハッキングしてるな!?」
 『存在しないはずの』データがルリの手元にある意味に、リョーコは突然気が付いた。しかし、ルリは全く悪びれた様子はない。
『敵もやってますし、非常時です。……あ、それから、首謀者はこのハーリー君ですので』
『か、艦長、ひどいですよ〜』
 出し抜けにウィンドウの中に映像を引っぱり出され、責任を押しつけられたハーリーが泣きそうな顔で非難する。元はと言えば、ハッキングはルリの命令なのだから、これは完全に責任のなすりつけである。相変わらずルリの顔には悪びれた様子はない。かつての”鉄面皮”の面目躍如である。
 もっとも、ルリはこのことを公にする、させるつもりなど全く無い。万が一責任が問われるような事態になれば、それは自分で被るか、証拠を抹消するつもりでいるので、ハーリーを隠れ蓑にしよう、などとは全く考えていない。
「アハハハハハ……!」
 それがわかっているから、リョーコは慌てるハーリーの姿に遠慮なく笑い声をあげた。
 やがて、ひとしきり笑うと、リョーコは表情を引き締めなおし、目の前の縦穴へとエステバリスを進めた。
「さぁて、何があるのやら……」
『追加のデータ、送ります。リョーコさん、少し急いでください。なんだか、更に怪しい雰囲気です』
「りょーかい!」
 そして、エステバリスも、先行する二機を追って、アマテラス最深部へと向かった。
 
 
 アキト、カイト、リョーコの三人がその通路を進む様子は、アマテラスの管制室にも既に把握されていた。
「敵その一、第五隔壁に到達! 二は現在第四を破壊にかかっており、三はその直後にいます!」
 ”その一”と仮称されているのはアキトのブラックサレナ、二はカイトのプリンセスガード、三はリョーコのエステバリスカスタムである。何故、味方であるはずのリョーコまで敵とされているのか――。それは、管制室の顔ぶれが示している。
 先程まで気勢をあげていたアズマ准将は、その指揮を執っていない。管制員たちの顔ぶれも、今や大半が先程までとは異なっている。先程までの管制員たちは、半分が縛り上げられ、床に転がされていた。
「よし……。プラン乙を発動! 各地に打電、”落ち着いていけ”」
「はっ!」
 指揮を執っているのは、シンジョウ中佐である。しかし、今の彼には、先程までの優秀だが覇気のない若手士官の面影は全く残っていない。背筋は伸び、目元は引き締まり、印象はまるで別人である。
 直前まで指揮を執っていたアズマ准将は、今は、司令官席の後ろで二人の兵士に拘束されている。アズマ准将は、小柄ながらも軍人らしくしっかりと鍛え上げられているため、拘束している二人もかなり苦労しているようだが。
「ええい、離せ! 儂は逃げやせん!」
「准将、お静かに!」
 振りきられそうになった二人が、全身の力を込めてアズマ准将を引き戻す。
「シンジョウ中佐! 何を企んでいる!? 君らは、一体何者だ!」
 覇気の無さに物足りなさを覚えていたものの、信頼していた副官の突然の反逆に、アズマ准将は衝撃を隠せないようだった。シンジョウ中佐は、そのアズマ准将に目をやることなく、歌い上げるように高らかに宣言した。
「地球の敵、木連の敵、宇宙のあらゆる腐敗の敵……」
「何? 何を言っている?」
 軍服に手をかけると、シンジョウ中佐はためらいもなく統合軍の上着を脱ぎ捨てる。その下から、胸に大きく『♂』を意匠化したシンボルの刻まれた服が現れる。
「……我々は、”火星の後継者”だ!」
 誰が映し出したのか、アマテラス管制室のスクリーンには、”火星の後継者”のシンボルが大映しになっていた。幾何学的な模様をバックに、赤く浮かび上がる”火星(♂)”のシンボル。
 何の変哲も、混じりけもない赤。その赤は、不思議と不吉な予感を感じさせた。
 


『……付いてきたのか』
「ここが、目的地ですか?」
『お前が、知る必要はない……。これは、俺一人の問題だ』
「出来の悪い弟分としては……、何も知らないままでは、やっぱり寝覚めが悪いですから」
 封鎖された第五隔壁の手前で、カイトはようやくアキトに追いついた。アキトはコミュニケの着信を制限しているので、本来カイトとの会話は出来ない。しかし、カイトにはオモイカネ、ユーチャリス経由のラインがあるので、何の障害にもならない。多少、手間はかかる方法だが。
 ブラックサレナの後方に付きながら、カイトは目の前の隔壁を見上げる。何の意味を持たせているのか、赤と青で奇妙な印が描かれたその扉は、侵入者を頑なに拒んでいる。
「(……アマテラスなだけに、天の岩戸、って所かな……)」
 ――カイトは、自分の頭をよぎったとりとめのない思考の、皮肉な正しさをまだ知らない。
 プリンセスガードにインパクトランサーを構えるふりをさせながら、カイトはブラックサレナを見る。アキトは一言発したきり、まるでカイトの存在を無視するように、機体をほんの少し、前に進める。
 ブラックサレナのカメラアイに捉えた映像には、隔壁を手動で開閉するためのパネルが映っていた。それを確認すると、アキトは顔の半ば以上を覆うヘルメットの下で小さく笑った。――昔の彼とは違う、どこか歪んだ笑みだった。
『……ラピス』
『今、解析中』
 テールバインダーをパネルに伸ばすと同時に、空間を隔てた場所でラピスがパスワードの解析を始める。既にアマテラスのシステムとデータのほとんどを手に入れている彼女にとって、それは邪魔者が入る余地のない程、短時間で終わるはずの作業だった。
 そこに、爆音が響いた。
 どこかでショートカットをしてきたのか、シャッターを破壊して本来の通路とは異なった場所から、リョーコがやってきたのだ。爆煙と瓦礫の向こうから、赤い機体が姿を見せる。
『よーっし! そのまま、そのまま!』
「拙い……!」
 カイトは、ばつの悪い表情を浮かべて機体をわきに下がらせる。その動きを視界に収めながら、リョーコはブラックサレナに通信用のワイヤーを伸ばす。リョーコをまるで気にとめていないブラックサレナに、ケーブルがあっけなく張り付いた。
『……俺は頼まれただけでね。この子が、アンタと話がしたいんだとさ』
 アキトの目の前に、強制的にウィンドウが開かれる。もっとも、アキトからは向こうに声も画像も届かない、一方通行のものだが。リョーコの画像が切り替わり、姿を見せたルリが淡々と口を開く。
『こんにちは。私は連合宇宙軍少佐、ホシノ・ルリです。無理矢理ですいません。”貴方”がウィンドウの送受信にプロテクトをかけている上に……』
 ここで、ルリはちらりと視線を逸らす。本人と通信が繋がらなくても、リョーコの機体からの映像でとっくに把握していたのだろう。そちらには、カイトのプリンセスガードが、通常より二周り大きな機体を縮めるようにたたずんでいた。
『”カイトさん”が自分勝手で頼りにならないので、”リョーコさん”に中継を頼んだんです』
 リョーコとカイトは、ここでルリの口振りに違和感を感じた。ルリがまるで、知人に話しかけるように、二人の個人名まで出しているのである。会話での駆け引きに疎いリョーコにとっては、それはただの違和感で終わったのだが、事情をほんの少し深く知っているカイトには、冷や汗を浮かべさせるに十分だった。
「(もしかして、気付いたのか……? 手がかりなんて、ほとんど無かったはずなのに)……流石だね、ルリちゃん』
 本人は気付いていないが、カイトは思わず呟いていた。そして、もう意味はないと悟り、通信封鎖を解く。
『あの……。教えてください。”貴方”は……、”誰”ですか?』
 ルリの口調に、真摯なものが混ざる。表情は変わっていない。しかし、視線の強さが違う。何かを予感しているのか、彼女の手は、シートのIFSインターフェイスを固く握りしめていた。
 ウィンドウに映るルリは、アキトの記憶の中にあった姿から、想像通り、いやそれ以上に、美しく成長していた。一見儚げなその美しさは、”電子の妖精”との呼び名を奉られるに十分だった。遥か昔からその名が彼女のものだったかのように、全く違和感がない。
 もっとも、ルリのファンのほとんどは、その彼女の本質たる”強さ”を知らずにいるのだが。
『”貴方”は……もしかして……』
『ラピス、パスワード解除』
 問いかけを完全に無視したまま、アキトはラピスに短く命じる。同時に、ラピスからパスワードが送られてくる。ブラックサレナは、アキトの意志に従って、テールバインダーの汎用アームを伸ばし、開閉パネルのキーボードを叩く。
SNOW WHITE
 埃を巻き上げながら、カイトが”天の岩戸”と称した第五隔壁が開く。この様子から、かなりの年月、封鎖されたままだったことは間違いない。そう、おそらくは、このアマテラスが建造された当初から。
『……時間がない。見るのは勝手だ』
『……!』
 音声のみだが、初めてアキトからの通信が発せられる。その声に、ルリは『やはり』という表情を浮かべた。
 扉が開ききり、薄暗い照明に照らされた通路が見える。その先には、何か巨大な構造物が見えた。
「(……どこかで見たような……)」
 プリンセスガードのセンサーの感度を上げながら、カイトは一人呟く。通路の向こうの建造物は、拡大され、画像を補正処理され、その形をウィンドウの中で明瞭にする。
「……ナデシコB?」
 すぐに、カイトはその既視感の源に思い至った。その構造物は、彼にとってもっともなじみ深いものの一つ、実験戦艦ナデシコBを、上から見下ろした姿に酷似していたのだ。
 その正体を知らない――知識は持っているのだが、何分彼は『本物』を見たことがない――カイトの反応はその程度のものだったが、知っているリョーコの反応はめざましかった。
『な、何ぃ!?』
 一声叫ぶなり、エステバリスカスタムをダッシュさせる。機動兵器が全速を出すには危険なほどのスペースしかない通路を、一心に駆けて行く。
『……ル、ルリッ! 見てるか、見てるだろッ!』
 血を吐くように、リョーコは叫ぶ。激情が、それ以上の言葉を妨げているのか、リョーコは呻き声を上げる。
『……はい。リョーコさん、落ち着いてください』
 対して、ルリの声は静かだ。が、明らかに普段の彼女の声ではない。無理矢理押さえつけているのか、押さえつけられているのか、僅かに、細い。
『何だよ、これは……。あれは、何なんだよ!』
 リョーコの声が震えている。ルリの声も、今の彼女には届いていない。舌打ちしたそうな表情で、ルリは手元に小さく映っていたウィンドウに視線を向ける。
『サブロウタさん、出撃……』
『はいよっ!』
『何なんだよ! あれは!!』
 号泣するように、リョーコが叫ぶ。彼女の目からは、涙は流れていないが――。彼女は、涙を流さずに泣いていた。報われなかった恋の相手と、彼が選んだ相手のために。
 ブリッジ周辺を失っているナデシコAは、リョーコの叫びに何も応えることなく、ただ静かにそこに在った。
 
 
「あれが、ナデシコA……」
『……姿は変わっていても、あの”遺跡”ですね』
 カイトが呆然と呟く。ルリは意識的にか無意識にか、それを無視して作業を続ける。
 リョーコの機体から送られてきたデータと、オモイカネ内部のデータを照合して、以前とはとても似つかない形に変貌した”遺跡”の変化の過程がシミュレーションされる。その中で、”遺跡”は、まるで菌糸が苗床を喰らって繁殖するように、”根”を伸ばしてナデシコAを内部から浸食していた。
 かつて火星での最後の日、格納庫に固定されたはずの”遺跡”は、周囲の外壁を取り込んだのか消化したのか、外部にその姿をさらしていた。
『この前の戦争で、地球と木連が共に狙っていた火星の”遺跡”。すなわち、ボソンジャンプのブラックボックス……。”技術の勝利”を謳ったヒサゴプランの正体は、これを利用したものだったんですね……』
『……そうだ』
 リョーコの後をゆっくりと追って、アキトのブラックサレナがナデシコAを見下ろす位置に出る。更にその後に、カイトのプリンセスガードが続く。黒と白が、一対の組み合わせのように並び立つ。
『なぁ、ルリ……』
 一時の狂騒が引き、リョーコは肩を落として声を震わせる。
『これじゃあ、あいつらが浮かばれねぇよ……』
『リョーコさん……』
『こいつを宇宙の彼方にすっ飛ばして、やっとの思いで戦争を終わらせてよ……。ようやくあいつらは幸せになったってのに、すぐにあの事故……』
 ルリとカイトが、それぞれに微妙な反応を見せる。
『なんでこいつが……、こんなとこに、あるんだよぉ……!』
 リョーコが、唇を噛み締め、沈黙する。
 その時。
 ナデシコAの船体を隠すほどに、巨大なウィンドウが空中に開いた。そして、そこに”火星の後継者”の軍服に身を固めた、壮年の男性が映し出される。固く、巨大な”信念”を彫刻し、人の形にしたようなその面差しは、先だっての戦争の首謀者。サブロウタも参加した木連の”熱血クーデター”において、戦闘中に行方不明になったはずの、”正義”の男。
『それは、人類の未来のためだ! かつて私の理想を砕いた、ナデシコの戦士達よ!!』
『え!?』
『こいつは、誰なんだい、ルリちゃん?』
『く……、草壁、中将……?』
 型で抜き出したかの様な角刈りに、彫りの深い顔立ち、草壁春樹その人に、間違いなかった。やはり名前くらいしか知らないカイトが的外れな事を言っているが、ルリとリョーコは意外な人物の登場に、状況を忘れた。
『三年前は、”遺跡”を押さえられ、私は敗れた。だが、今回は私の勝ちだ! ”遺跡”は我が手にあり、そしてもはやお前達の手には戻らない!!』
 ウィンドウの向こうの草壁中将が、高らかに宣言する。そして、ウィンドウは一方的に閉じられた。
 ルリとリョーコは、意外な事態にまだ呆けている。だから、ナデシコAの影から飛び出した小さな影に、気が付けなかった。気付いたのは、それを予測していたアキトと、草壁中将を知らないが故に、普段同様周囲を警戒していたカイトの二人。小さな影は、動きを止めたままのリョーコを狙っている。
『リョーコちゃん!』「リョーコさん!」『右ッ!』
『え!?』
 二人の警告が重なって聞こえる。リョーコもさるもの、一瞬で我を取り戻し、指示された右を見る前に回避行動をとる。しかし、それも間に合わなかった。
 この狭い空間では、非常識と言える速度で、エステバリスを半分にしたように見える、機動兵器が立て続けに三機、リョーコに襲いかかった。それらが携えた武器が、展開されたディストーションフィールドをあっさりと貫き、エステバリスカスタムを床に叩き付け、張り付けにする。
「リョーコさん!」
 カイトが、すぐさまリョーコのフォローに回る。間近で確認したそれは、なんの変哲もない、金属製の棒に見えた。
「これ……、錫杖? ……っと!」
 天井にインパクトランサーを向け、鍔元に内蔵されたラピッドライフルを斉射する。プリンセスガードを狙ったのか、エステバリスカスタムに止めを刺そうとしていたのか、襲いかかろうとしていた敵が、斉射を避けて再び舞い上がる。僅かに着弾したものの、それはディストーションフィールドにあっさりと弾かれた。
『リョーコさん、大丈夫ですか?』
『こ、今度は、かなりやばいかな……。カイト、ちょっと頼む!』
「了解!」
 二本の錫杖に左腕と左足を貫かれ、ぎりぎりでコックピット直撃を回避した最後の一本に押さえつけられ、リョーコのエステバリスカスタムは行動不能に陥っていた。
『動けます?』
『ああ……。よっ、と』
 使いものになりそうもない左腕と左足を、爆発ボルトで切り離し、リョーコは何とか機体を膝立ちさせる。その間に、アキトはいつの間にか六機に増えた小さな影を相手に、空中戦を演じていた。とは言っても、強固きわまりないディストーションフィールドで身を守りつつ、時折すれ違った敵に向けて、両手の固定装備らしいハンドカノンを連射するだけだが。
 この狭い空間では、アキトとブラックサレナでも先程外で見せた高機動戦は不可能だ。対して敵は、その小ささもあってのことか、凄まじいばかりの機動性を見せ、まるで猿のような機敏な動きでアキトを翻弄している。
『ええい……!』
 苛立たしげに、アキトは舌打ちする。また一機の敵が襲いかかってこようとしていた。機体にハンドカノンを構えさせ、迎撃の体勢をとる。
 と、下方からのラピッドライフルの斉射が、敵の動きを乱した。めくら撃ちに近い乱射だったが、一瞬だけはね回る敵の動きが乱れる。
「こっちへ!」
 カイトの声に、アキトは素早くそちらへ向かう。対決の構図が、ブラックサレナ一機対六機から、ブラックサレナ、プリンセスガード、中破のエステバリスカスタム対六機に変わる。
 ブラックサレナをエステバリスカスタムの目の前に下ろし、アキトは構えをとる。そして、背後を振り返りもせずにリョーコを促す。
『……お前には関係ない。早く逃げろ』
『今、やってるよっ!』
 応えつつ、リョーコは最後に残った錫杖の一本を引き抜こうと悪戦苦闘している。時折、上から敵が襲いかかってくるが、床に激突することを警戒しているのか、先程までの早さはない。ブラックサレナとプリンセスガードの張る弾幕に追い返され、また天井近くに舞い上がる。
 と、その時、アマテラス全体に振動が走った。ただでさえ片腕片足を失って不安定なエステバリスカスタムが、てきめんにバランスを崩す。
『っと! 何だぁ!? おい、ルリ! 何だよ、この揺れ?』
『リョーコさん、カイトさん。今、そちらにタカスギさんに援護に行ってもらいました。急いで脱出してください』
「どうしたの?」
 上から視線を外さず、カイトが尋ねる。
『……”火星の後継者”と名乗る一団が、アマテラスの占拠を宣言、同時に、アマテラスを爆破して、放棄することを宣言しました。既に崩壊が始まっています。時間がありません』
『傍迷惑なんだか、律儀なんだか……。間違いなく、こいつら木連だな』
「けれん味のあり過ぎるやり方ですね……。でも、あいつらが、大人しく逃がしてくれるのかどうか」
 吐き捨てるように、リョーコは言う。カイトも渋い顔つきで、目の前のブラックサレナの背中と、宙を舞う敵を交互に見つめる。
 と、周囲に、金属を打ち鳴らすような、澄んだ音が響いた。空気のないこの区域に音が響くはずが無く、わざわざ通信回線で流された音であることは確かなのだが、この演出を、カイトもリョーコも笑うことは出来なかった。同時に辺りの雰囲気を一変させた、強烈な気配に気を取られていたのだ。
 それは、激しくはない。静かな威圧感が、歴戦の戦士にも悪寒を感じさせる、そんな気配だった。
 ブラックサレナが、宙の一点を見据える。何もなかったはずだった空間のその一点に、黒い染みのようなものが浮かぶ。染みは徐々に広がり、やがてはっきりとした円に変わった。
 そして、その空間の染み――ボソンジャンプのゲートから、鮮やかな”紅”を纏った気配の主が降りてきた。それは、照明用のライトの上にゆっくりと降り立つ。これまでの敵とは違う、より人型に近い形をした、紅の機動兵器。右手に構えた錫杖らしきものが、また澄んだ音を立てた。小さな機動兵器の群は、まるで従者のように、その周りに集結する。
『……一夜にて、天津国まで伸び行くは……』
 紅の機動兵器が謳う。ブラックサレナの、アキトの気配が激烈な変化を見せた。
ひさごのごとき、宇宙の螺旋……』
 ブラックサレナが、両手のハンドカノンを構える。アキトは、目を見開いて紅い機動兵器を睨み据える。ヘルメットの下の目に浮かぶ感情は、強烈な憎悪。――そして、もう一つ。彼の目には、わずかにだが、喜びの色が浮かんでいた。それは、暗く、深く、歪んでいるが、紛れもない喜びの色。
『……女の前で死ぬか? 修羅にもなれぬ未熟者よ』
『女ぁ?』
 何も知らないリョーコは、話に付いていけていない。一方のカイトは、『まさか』という声を漏らしかけ、抑えるのに苦労していた。彼の中では、断片的な何かが繋がったのだ。
『くぅっ……!』
 アキトは、奥歯を砕け散らんばかりに噛み締める。ヘルメットから覗く僅かな素肌に、光の線が走ったように見えた。
 紅い機動兵器との間に、緊張感が高まっていく。まさに一触即発、カイトもリョーコも迂闊には動けない、声もかけられない。ブラックサレナが右脚を半歩前に出す。紅い機動兵器が、右手の錫杖を両手で構える。
 そこに、再び異変が起こる。今度は、ナデシコAの甲板上にある”遺跡”ユニットが発光を始めたのだ。それだけではない。何とも知れない金属で出来ていたはずの”遺跡”ユニットが、まるで花のつぼみが開くように、外側から開いてめくれていった。
 一枚、また一枚と”遺跡”ユニットはめくれていく。そして、その下から、幾何学的な模様以外のものが見えたとき、ルリ、カイト、リョーコの三人は揃って呼吸すら忘れた。見覚えのある顔、二度と見ることが出来ないはずのその顔に、三人の視線が集中する。
 下半身を”遺跡”ユニットに埋め込まれたようなその顔は、かつてのナデシコA艦長、ミスマル・ユリカその人の顔だった。但し、その肌の色は白く、無機質だった。まるで、彫像のように。
「こんな……!」
『ユリカさん……』
 カイトが滅多に見せない怒りを露わにする。ルリは、それきり絶句してしまう。ただリョーコだけは、ユリカの姿を見たことで、もう一つの可能性に気が付いていた。ユリカがいるということは、もう一人も!
『アキト! アキトなんだろう!? だからさっき、俺のこと”リョーコちゃん”って言ったんだろ!?』
 まだ錫杖に縫いつけられたまま、リョーコはエステバリスカスタムを身じろぎさせる。アキトのブラックサレナに駆け寄ろうとでも言うのか、強引に錫杖を引き抜こうと、大きくもがく。
 しかし、それを黙ってみている敵ではなかった。
『滅』
 紅い機動兵器からの声と共に、小さな機動兵器が六機、宙に舞う。先程見せた、猿のような変幻自在の動きで、ブラックサレナとプリンセスガードに襲いかかる。
 ブラックサレナは、敵に応じて舞い上がる。空中は不利だとわかっているだろうに、それでもアキトは飛び出した。
 対してプリンセスガードは、床面を両足で踏みつけ、待ちの構えだ。時折ラピッドライフルを連射するが、牽制以上の意味はないのか、ろくに照準もされていない。
 やがて、周りを飛び回っていた敵の一機が、死角を付いてプリンセスガードに襲いかかる。通常より二周り大きいプリンセスガードに、通常のものより更に小さい敵の機動兵器。先程の動きを見るに、格闘戦は得意なのだろう、的確に間合いを詰めてくる。
「速いな……」
 カイトは、それを右腕に構えたインパクトランサーで振り払う。懐に飛び込まれない限り、このランサーは有効な武器だ。錫杖を持っていればともかく、敵はまたあっさりと間合いを離す。
 一機の踏み込みはかわしたが、そうなれば当然手段を変える。今度は、二機が左右から迫ってくる。同時攻撃ならば、片方がインパクトランサーの間合いの内側に入り込める可能性は高い。プリンセスガードは左腕に小盾も装備しているが、超接近戦になれば、その効果も薄い。盾というものは、本来敵の武器を弾き返すためのものであって、素手で組み付いてくる相手に使うものではないのだ。
『殺!』
 微妙な機動でライフルの射線を外しつつ、二体の敵が迫る。アキトは三体の敵に囲まれており、リョーコは動けない。カイトは、圧倒的に不利な態勢にあるはずだった。
「……!」
 憶えのある感覚が、カイトの目の奥、そのまた奥を駆けめぐる。『死』の予感、だ。しかし、同時にそれは限界を超えた集中力と高揚感を彼にもたらすものだった。
 時間を引き延ばしたような感覚、敵の動きがコマ送りのようにはっきりと見える。左右の敵の位置から姿勢まで、プリンセスガードのセンサーが捉えた情報が、カイトの中で空間的に統合されて把握される。
 ――ほんの少しだけ、左が先!
 複数の相手から同時に攻撃を受けた場合、タイミングが完全に同じよりも、少しだけずれている方が、防御はしにくい。敵は、それを完璧に実践していた。完全に同時ならば、一つの動きで二つを避けることもできる。しかし、ずれている場合、先をよければ後を避けることが難しくなってしまう。相手も、こちらの動きに合わせて、対応を変えることが出来るからだ。
 機体をひねって、インパクトランサーを左手に向けて突き出す。カイトも焦ったのか、僅かに遠い。敵のパイロットがほくそ笑んでいるような気配がした。
 ランサーは空を切って――、”伸びた”穂先だけが、敵の右腕を吹き飛ばした。レールガン方式で穂先を撃ち出し、間合いをほんのすこし伸ばす。こんな芸当もインパクトランサーには可能なのだ。本来は命中した時点で射出し、さらなる打撃を与えることを目的としたギミックだが、カイトはそれを応用してみせたのである。伸びた穂先は、自動的に柄に引き込まれ、元に戻る。
 しかし、右の敵は吹き飛ぶ仲間に目もくれず、当初の目的通りに接近を果たしつつあった。接近してしまえば、ランサーを使用することなど不可能、そのうえで頑丈そうな本体を避け、センサーを破壊して無力化する、というところだろう。
 カイトは突き出したランサーを手元に戻す。その戻しの早さは尋常ではないが、到底間に合うものではない。今からそれで向かってくる敵を落とすには、間合いが近すぎる。長ものは懐が広い分、その中に入られるとたちまち利点が欠点となる。
 背後にいたリョーコは、その時信じられないものを見た。カイトは、引き戻したランサーを敵に向けることもせず、あろう事か敵を向かえるように機体の正面をそちらに向けたのである。あれでは、コックピットを狙ってくださいと言わんばかりだ。
『バッカ野郎ッ!』
 プリンセスガードの肩越しに、敵が拳を構えるのが見えた。コックピットを潰され、大破するプリンセスガードの姿がありありと想像できた。リョーコは思わず目を背けてしまう。
 当のカイトは、そんなリョーコを気にもとめず、淡々と敵を待っていた。自分の動き、敵の動き、それらは全て把握している。いつ、どこに敵に攻撃がやってくるか、敵の動きからそれを予測する。敵の狙いは、コックピットへの体当たり。一撃で破壊されなくても、そんなものを喰らったら衝撃でカイトはあっさり気絶してしまうだろう。
「(――3)」
 敵の動きにタイミングを合わせるように、カイトの脳裏でカウントが始まる。踏み出していたプリンセスガードの右脚を一歩引き、ランサーをだらりと下に向ける。
「(――2)」
 敵が迫る。半瞬後には、それはカイトに間違いなく重大な衝撃を与えるはずだ。左腕の小盾が、拳を覆うように前方へスライドした。その左腕は、既に腰溜めに構えられている。
「(――1!)」
 肩からプリンセスガードに激突する、その試みは僅かの差で潰えた。打ち上げ気味の左手の一撃が、敵を弾き返したのだ。加速度がついていたにもかかわらず、プリンセスガードは、その巨体を活かしたパワーの一撃で、正面から粉砕したのだ。ただ殴り飛ばされただけではない。敵の機体は、装甲を引き裂かれたような損傷を受けている。
 プリンセスガードの左拳は、細く、縦に長い小盾に覆われて、格闘戦用のクローを装着したように見えた。例えるならば、あの盾は同時にセスタスやカタールのような機能を備えているのだろう。
 カイトの”強さ”というものは、射撃が上手い、格闘センスがある、という類の技術に支えられているものではない。先程の攻防で見せたような、”空間の把握”――いつ、どこに何があり、どれだけの速さでどちらに向かっているのか、機体のセンサーの情報から、それがカイトには感覚的にわかるのだ。
 そして、その感覚によって得た情報を活かすことの出来る驚異的な反射速度と、戦いを組立るセンス、それを実行する操縦技術がカイトにはある。数手先までを読み切り、それに対応されては、相手にはまるでカイトが予知能力でも持っているかのように見えるだろう。
 中破した二機が、それでも自力で舞い上がる。その動きに最初ほどの鋭さはないが、隙は見せずに傍観していた紅い機体の元へと戻る。呼吸を合わせて、アキトと戦っていた三機も一旦引き下がる。
 アマテラス本体を通じて、絶え間ない振動と爆発音の伝わる中、彼らは睨み合いに入った。カイト達は、アキトを含めて三機。リョーコは戦闘不能だが、プリンセスガードとブラックサレナには致命的な損傷はない。
 対して、敵は中破三機、小破一機。それでも温存されていた一機は残っているから、戦力比としては四対一程度だろうか、とカイトは分析する。戦闘状態のカイトは、ルリの命令ですら受け付けない戦闘狂に見える。しかし、純粋に戦うことに関しては、あくまで冷静なのだ。
 エステバリスカスタムを拘束する錫杖を引き抜こうと、リョーコは悪戦苦闘していた。その彼女の動きを止めるほどの緊張感が、辺りに満ちる。
 その睨み合いが長かったのか短かったのか。その緊張は、爆発することなく、隔壁の破壊音と共に終わりを告げた。
『イィィーヤッホォォォーッ!』
「サブロウタさん!?」
 蒼のスーパーエステバリスは、ラピッドライフルから弾丸をばらまきながら、一直線にカイト達の元へと飛んでくる。着弾の煙で、敵の姿が視界から消えるほどだった。
『真打ちぃぃぃ、登場ぉぉぉぉー!!』
 止めとばかりにミサイルを撃ち込まれたアマテラスの内壁が、派手に脱落を始める。全体の崩壊を待つまでもなく、このブロックだけが今にも崩壊してしまいそうだ。
『てんめぇぇぇ! 人んちのコロニーの中で何考えてやがる!』
『こっちも上官の命令なんでね。それに、もうすぐ爆発するんだから、今更この位どうでも良いんじゃない?』
 通信回線にリョーコの怒鳴り声が響く。歴戦の猛者をも借りてきた猫に変えてしまうリョーコの一喝だったが、サブロウタは全く恐れ入った様子はない。それどころか、リョーコのエステバリスの側に降り立つと、わき目もふらずにアサルトピットだけをフレームから取り外し、回収する。
『あ、こら! 勝手に何しやがんだ、おい!』
『カイトぉ! 艦長から撤退命令だぞ! すぐに脱出して、知ってることを洗いざらい喋れってさ!』
「すぐに、って、それじゃ、”遺跡”はどうするんです?」
『そうだ! アレには、ユリカが……!』
『相転移砲だってキャンセルする能力を持った”遺跡”だぞ? アマテラスの爆発程度で壊れるもんか! ……宇宙軍としては、そっちの黒尽くめさんにも来てもらいたいんだが……。無理だよな?』
 幾多のコロニー守備隊を、コロニーごと葬った連続襲撃事件の容疑者である黒い機体、アキトを前にしても、サブロウタの飄々とした物言いは変わらない。全く期待した様子はなかったが、それでも一応、というようにアキトに同行を求める。
『お前らは、勝手に行け。俺には、まだやるべき事がある……』
 アキトは、先程まで敵が陣取っていた空間を見据えたまま動かない。そろそろ爆煙も晴れ、視界がクリアになってきている。
 あの敵ならば、煙を利用してこちらに襲いかかって来るくらいは平気でやるはず。それなのに来ないと言うことは、ミサイルの直撃でも受けたのか――?
 カイトは、後方を気にしつつもサブロウタに続こうと機体を動かした。アキトに聞きたいことは山ほどあったが、一度こうと決めたときのアキトの頑固さは知っている。ここで問いつめても、得るものはないだろう。
 サブロウタは、リョーコのアサルトピットを抱えて動き出す。
 そこに、再び錫杖の音が響いた。
 最初に反応したのは、何とサブロウタだった。音を聞くなり、スーパーエステバリスを全力で加速させ、一気に逃げにかかる。
『お前も急げ! もう、アマテラスもやばいはずだ!』
 自らが通ってきた通路に飛び込みつつ、サブロウタはコミュニケに向かった怒鳴った。カイトのプリンセスガードが、後に続いて通路に降り立つ。
 しかし、カイトはそこで立ち止まった。
『おい!』
「先に行ってください。僕は、適当に足止めしてから脱出します」
 カイトの声に、ラピッドライフルの射撃音が重なる。サブロウタには見えなかったが、先程戦っていた敵が、また挑みかかってきたのだろう。
『……急げよ!』
 サブロウタは、一言だけ言って通信を切った。アサルトピットを抱えたこの状態で襲われては、サブロウタとスーパーエステバリスでもひとたまりもない。そうなった場合、間違いなくリョーコは絶望的だろう。その当人は何やら怒鳴っているが、それも無視する。
 短い時間の飛行で、前方に外へのゲートが姿を見せた。とりあえず、一安心というところだろう。サブロウタは、リョーコに声をかけておこうとコミュニケのウィンドウを開く。
『おーい、中尉……』
 その時、リョーコの返事が返ってくる前に、後方から轟音が襲いかかってきた。巨大な衝撃を伴ったそれは、通路を破壊し、更にその通路の残骸を炎で焼き尽くしながら、スーパーエステバリスを飲み込もうと襲いかかってくる。
『いけねっ!』
 サブロウタは、慌てて下がっていた速度を元に戻す。開いたウィンドウに、リョーコがまた大映しになって叫んだ。
『バカ野郎、引き返せ! あそこには、ユリカが、アキトが、カイトがいるんだ!!』
『……艦長命令なんだ、悪いな、中尉さん』
 ぎりぎりで炎のあぎとを逃れ、宇宙空間にスーパーエステバリスが身を躍らせる。その先には、ナデシコBが白い巨体を浮遊させていた。
『おかけになった通信先は、現在、不通となっております』
 サブロウタが望みをかけて開いたコミュニケのウィンドウに、そんな文字が踊る。
 爆発による電磁効果のためか、それとも――。カイトとの通信は、完全に途絶していた。
 


「アキトさん、下がってください! ここでは、これ以上戦えませんよ!」
 まとわりついてくる敵を払いのけつつ、カイトは叫んだ。視線の先では、アキトが同様に敵に囲まれ、間断なく攻撃を受けている。攻撃が効いている様子はないが、切れ目無い攻撃のために反撃もままならないらしい。その様子は、猟犬の群にまとわりつかれた猛獣のようだった。
『……だめだ、俺は奴と……、北辰と決着を付けなければならない。それに、ユリカもいる』
 ふと、カイトはアキトの物言いに違和感を感じた。再会の時にも、微かに感じたあの違和感。聞くはずのない言葉を、いうはずのない人から聞かされたような、そんな違和感。アキトを変えた”北辰”という人物が何者なのか、何があったのか、この場で問いつめたい衝動に駆られる。
『だから、お前は早く逃げろ。お前まで巻き込まれることはない』
 しかし、その違和感は、当のアキトの言葉によって消えてしまった。こんな状況でも、他人を案じる。やはりあれはアキトだった。アキトを残して、カイトが脱出できるはずがない。
「僕も、残りますよ。二人の方が、心強いでしょう?」
『……もはや、貴様らの相手をしている余裕はない』
 アキトの返事が返ってくる前に、回線に割り込んでくる声があった。映像はない、音声のみである。
 しかし、カイトはその声に、背筋を走るものを感じた。
 ――”こいつ”は危険だ! と、理性ではなく感覚が警告を上げる。まるで、威嚇音を上げる毒蛇の前に立っているような気分だった。アキトの言う”北辰”、そして敵のリーダーらしい紅い機体、それが”こいつ”だ、と理由もなく確信する。
 爆煙が完全に晴れると、そこには、最初からいた六体の小さな敵、そして、ボソンジャンプで現れた紅い機体がいた。ただし、先程のようにライトの上に立っているのではない。北辰達は、ユリカが埋め込まれている”遺跡”ユニットの周囲に移動していた。
『ここを落とした手際は、見事であった。だが、このユニットを回収すれば、まだこちらが有利……。アマテラスは直に爆散する。貴様らの相手をして、巻き込まれるわけにはいかぬ』
 紅い機体を中心に、ボース粒子が発生する。紛れもなく、ボソンジャンプの前兆だ。チューリップを使わない以上、短距離ジャンプのはずだが、ジャンプした相手の出現場所を特定することは、いまだに不可能である。ここでジャンプされては、間違いなく取り逃がすことになる。
『……逃がすかぁっ!』
 ボソンジャンプに巻き込まれることを懸念して、一瞬躊躇したカイトの横を、アキトのブラックサレナが噴射炎の尾を引いて北辰に襲いかかる。
 ハンドカノンを連射しながら、計算も何もなく突撃するアキト。それは、鬼神の勢いと言えるほどのものだったが――。
『……砕』
 冷静さを失ったその攻撃は、敵には格好の的に過ぎなかった。すれ違いざまに北辰が錫杖を一振りすると、ブラックサレナはあっさりと軌道を逸らされ、壁面に激突して静止する。ぎりぎりで制動をかけたために、激突によって致命的な損傷を受けることは免れたようだが、すぐには動けない。
『テンカワ・アキト。汝、いまだ未熟なり……。所詮人では、人の道を外れた修羅には勝てぬ……。跳躍!』
 紅い機体は、ボース粒子をまき散らしてジャンプに入った。周囲の小さい機体達も、ジャンプに入る。同時に、ナデシコAに根を張っていたかののように見えた”遺跡”ユニットが、光に包まれる。北辰達は、”遺跡”ごとジャンプしたのだ。
「ま、待てっ! ユリカさんは置いて行け!」
 慌ててランサー内蔵のラピッドライフルを撃ってみるが、もう遅かった。七体の敵は、”遺跡”ごとアマテラス内部から消えていた。
「……」
『北辰……!!』
 無言で立ち尽くすカイトと、唇を歪めて呻くアキト。歯ぎしりの音が、はっきりと聞こえた。
 カイトには、そんなアキトに、また奇妙な違和感を覚えた。
 
 
『……どうやって脱出する気だ? もう、入ってきた通路も崩れ落ちた。その機体を捨てれば、ジャンプして連れ出すこともできるが』
 アキトは、あの直後に冷静さを取り戻していた。以前のアキトでは、こうは出来なかっただろう。姿を消してからの二年間は、やはり彼を大きく変えていた、とカイトは思う。決して、幸せな変わり方とは思えなかったが。
「ご心配なく、手はあります。でも、一つだけ」
『……何だ?』
「アマテラスの、このブロックを中心とした三面図をください。ハッキングしてたんですから、あるでしょう? ……それから、後で、ルリちゃんに直接会ってください」
 カイトの最初の頼みは、すぐにユーチャリスのラピスから返事が返ってきた。”ありがとう”の一言と共に。素っ気ないが細やかな気遣いは、アキトの影響なのだろうか。
 しかし二つ目の頼みには、アキトは沈黙を守っていた。会えないのか、会いたくないのか――。カイトが答えを待つ間にも、アマテラス崩壊の音は徐々に大きくなっていく。仕方ない、という溜息を付いて、カイトはアキトに背を向けた。
「返事は、今度で構いません……。でも、ルリちゃんは、僕以上にお二人のことで悲しんでいました。今度のことで、気付いてしまったでしょうし……」
 カイトはプリンセスガードを広いブロックの中央付近に舞い上がらせた。そして床――と思われる方向――に機体の正面を向け、いままで使わなかった背中のM.G.B.R.(マルチモード・グラビティブラスト・ライフル)を構える。
 三面図からはじき出したその方向は、アマテラスの外壁がもっとも薄い方向だった。カイトは、このアマテラスの外壁に、機動兵器の搭載武器で穴を開けようというのである。普通なら、それは狂気の沙汰だが、プリンセスガードはブラックサレナと同様に、そもそも”普通”という言葉が通用する機体ではないのだ。
 内蔵された小型相転移エンジンが、エネルギーを真空から絞り出す。その存在を誇示するように、凄まじいエネルギー量がマルチブラスターに流れ込んだ。
「……いけーっ!!」
 小型ではあるが、紛れもないグラビティブラストが咆吼する。光を出さない重力波の閃光が、アマテラスの内壁を削り、砕き、粉砕する。リミッターを外されたその威力に、一発でブロックの内壁に大穴が空き、またアマテラスが大きく揺れる。
 フルパワーで使用した影響か、砲身のあちこちで火花が散る。しかし、カイトは全くためらうことなく、二発目を放つ。
 今度は、砲身から煙が噴き始めた。大きすぎるエネルギーに砲身が耐えきれず、融解が始まっているのだ。それでも、カイトの目論見通り、アマテラスの外壁には、機動兵器が通るには十分な穴が空いていた。削り取られたようなその穴は、長くは持たないだろうが、要は脱出するまで持てばいいのだ。
「……こいつは、やっぱり強力すぎるなぁ……」
 開発中に理解していたはずだったが、やはり、プリンセスガードは規格からかけ離れた化け物である。”対艦・対要塞兵器”の名は伊達ではない。プリンセスガードが一個中隊あれば、冗談抜きに、一個艦隊並の戦力となるだろう。
 マルチブラスターは使用不能、相転移エンジンも不調を訴えていたが、とりあえずプリンセスガードが脱出するには支障はない。カイトは、機体を作ったばかりの穴に飛び込ませる。もうアキトを見ようとはせず、最後に声だけを送った。
「それじゃ、アキトさん。また、必ず」
『……三回忌の日、地球で会おう……。ジャンプ』
 帰ってくるとは思っていなかった返事に、カイトはウィンドウを見直した。しかし、そこにあるのは、もうジャンプの名残のボース粒子ばかり。
 すぐに、カイトは視線をウィンドウから外し、前方の通路へと向けた。アマテラスの崩壊が進み、流石に危険が無視できないものになってきたのだ。今はアキトのことは忘れて、脱出することに神経を集中する。程なく、目の前に宇宙空間が広がった。そして、カイトの背後で――。
 ――2201年8月9日、アマテラス、爆散。
 


『ルリ! 応答しろ! 見ただろ!? あいつら、生きてたんだよ! ……答えろ、ルリ! 今度も助けられないのかよ! カイトもいたんだぞ!』
 ルリは、放心したように虚空を見つめ――しかし、奥歯を噛み締めながら――、リョーコの声を聞き流していた。
『チクショウ……、チクショウ……! またか、またなのかよぉ……!』
 本音を言えば、ルリとて今すぐ彼らを助けに行きたい。しかし、ルリはナデシコBの艦長という責任ある立場であり、ナデシコBには多数の民間人が避難してきている。アマテラスが爆発する際の余波を避けるためにも、一刻も早くこの場を去らなければならなかった。
「……戦闘モード、解除。タカスギ機回収後、この宙域を、離脱……」
「……了解。でも、艦長……、いいんですか?」
 ハーリーの問いに、ルリは答えなかった。
「あの……。漂流者がいる可能性もありますから、せめて、全天監視くらいはやった方が……」
「……任せます、ハーリー君」
「はい」
 初対面でカイトを”敵”と認識したらしいハーリーだったが、彼は本質的に善人である。カイトを見殺しになど出来るはずがない。もし、カイトが中にいる間にアマテラスが爆発すれば、それも無駄になってしまうのだが、やらないよりはましだろう。……精神的にも。
 オモイカネだけでカバーできないところは、ブリッジ下段のオペレーター達が補い、周囲に監視の目が向けられる。しかし、彼らの捜索も空しく、サブロウタが帰り着くまでに、カイトも、誰も発見されることはなかった。
 
 
 ブリッジに上がったサブロウタは、既にパイロットスーツ姿ではなかった。リョーコの姿はない。どうやら、途中で姿を消したらしい。今はルリの顔を見たくない、というところなのだろう。それは、ルリも同様だった。どんな顔をしたらいいか、わからないのだ。
 今リョーコにあったりしたら、苦労して被っているこの仮面も、あっさりとはがれ落ちて砕けてしまいそうだったから。
「タカスギ大尉、ただいま帰還しました!」
「……ご苦労様でした。後で報告書、お願いします」
「はい。……艦長、少しお休みになったら如何ですか? 顔色、悪いですよ?」
 サブロウタが指摘するまでもなく、ルリの顔色は、蒼白を通り越して、存在感が薄れたように感じるほど白かった。病人でも、なかなかこうはなるまい。
 ルリとカイトの関係を知っている、ナデシコBブリッジ下段のオペレーター達は、その痛々しさに声もかけられなかった。ハーリーも、雰囲気に飲まれてしまって無駄口一つたたけない。サブロウタが声をかけることが出来たのは、経験の重みがあってこそだろう。
「わかりました……。もう何事もないでしょうから、タカスギさん、ハーリー君、後はお願いします。私は、自室で休んでますから……」
 ふらつきそうになる足を必死で支えて、ルリはブリッジの出口へと向かう。沈黙の中で、小さな足音が妙に響いた。
 と、そこに、着信音が鳴った。場違いなその音に、非難の色をにじませた視線が、音の元へと幾つも向かう。通信を受ける羽目になったオオトジマ少尉は、思わず心の中で悪態を付き――、次の瞬間、怪訝な表情を浮かべた。コンソールに映るその内容、救難信号だったからである。
 そして、もう少しその情報を読み進めたところで、オオトジマ少尉の表情は激変した。
「艦長! ちょっと待ってください! 救難信号です! 相手は……ヤマモト中尉ですよ! ”我、被害は小なれども、推進機の不調により、自力での帰還不可能……”。カイト中尉、生きてます!」
 一瞬、ブリッジが静寂に包まれ、そして歓声が爆発する。
 ナデシコBの被害報告に記録されようとしていた、”行方不明者一名”の文字が、オモイカネによって取り消された。
 
 
 結局、ルリはカイトが収容されるまで、ブリッジから動こうとしなかった。格納庫に迎えに行くのでは、という大方の予想は外れたが、収容作業を一瞬でも見逃さないとでも言うかのように、その視線はウィンドウから外れない。
 ”情報の分析と、戦闘報告書の作成、よろしく”と反論の余地もなく言い渡されたハーリーが、少し恨めしそうにそのルリに視線をやったが、無表情なようでいて、その裏に期待と焦燥感を溢れさせんばかりの彼女を見ては、何も言えるわけがない。幼いなりに、男の本能の部分で、今のルリには何を言っても無駄だと理解したのだろうか。
 やがて、サブロウタのスーパーエステバリスに曳航されて、プリンセスガードが格納庫に収容されると、ルリはようやく緊張を解いた。そして大きく溜息を付く。その九割方は、安堵のため息だろう。
 そして、ようやくカイトの姿がウィンドウに映る。多少の疲労は見受けられるが、怪我一つ作っていないようだ。プリンセスガードには、脱出時に作ったのだろうか、背中の重力波スラスターが大きく破損している。爆発四散するアマテラスの破片でも、避け損ねたのだろう。
 カイトは生き残った祝福にか、多少手荒な歓迎を受けている。そこに、ウィンドウ越しにルリが割り込んできた。
「カイトさん――」
『あ、ルリちゃ……、艦長。ヤマモト中尉、ただいま……』
「今は、お話は結構です。命令違反につき、別命あるまで自室で謹慎していてください。タカスギ大尉、私は疲れましたから、しばらく休みます。後、よろしく」
『……?』
『了解しました、艦長』
 必要なことだけ、反論の余地のない口調で言い切ると、ルリはブリッジを半ば駆け出すように出ていった。ハーリーにも”後、よろしく”というのは忘れなかったが、返事をする暇はなかった。
 士官の私室が並ぶ居住ブロックに辿り着くと、ルリは、真っ直ぐ自室には戻らず、一つの扉の前で立ち止まった。戦闘後の人気のない通路で、ルリはその扉に寄りかかる。
 ルリの瞳には、様々な感情が去来していた。感情に振り回されて、自分を抑え切れていない、そんな様子すら見られる。
 程なく、ルリの待ち人が姿を現した。扉に寄りかかるルリに、多少意外そうな表情を見せる。
「どうしたの、ルリちゃん? 確か、休むって……」
「カイトさん……」
 ルリは、ゆっくりと顔を上げた。ばつの悪そうな表情のカイトが、一歩前に立っている。
 それを確認すると、ルリは半歩前に踏み出し、右手を思い切り振り抜いた。乾いた音が通路に響く。
 ルリが自分に手を上げる、という予想外もいいところの事態に、カイトは呆然と立ち尽くしてしまった。しかし、俯いて怒ったように肩を震わせるルリに、戦闘時の行動のまずさを再認識したらしい。おそるおそる、その細く、頼りない肩に手を伸ばす。
「ごめん、ルリちゃん」
「……言い訳は聞きたくありません」
 顔を上げたルリは……、目から大粒の涙をぽろぽろとこぼしていた。彼女の、滅多にない感情の発露。そして、反論を許さないままに、ルリは続ける。
「何度も、何度も、言ったじゃないですか。命令には従ってください、って……。命令を守ってくれないと、あなたを守りきれないって……! 命令を聞いてくれないんだったら、私はなんのためにいるんですか!? 私は、艦長は、あなたを、みんなを生きて連れて帰るために、いるんです!」
 カイトは、言葉もない。彼なりに考え、必要と判断した結果の行動だったのだが、ルリの言葉の前にはなんの意味もない。その上、関係者の一人であるべき彼女に対して、自分は隠し事をしている。
「テンカワさんと、ユリカさんがいなくなって、二人だけになって……。カイトさんまで、あなたまでいなくなるなんて、私はいやです。絶対に、いやです!」
 そして、ルリは今度こそ自室へと駆け込んだ。泣き顔を見せたくなかったのか、カイトから顔を背けて。
 追いかけるタイミングを外し、慌てて追いかけはしたものの、カイトの目の前で、無情にも扉は閉じてしまう。
「ルリちゃん? ……ルリちゃん?」
 扉を叩く手にも声にも、どうにも力が籠もらない。その目の前に、コミュニケのウィンドウが開いた。さてはルリからかと思うカイトだったが、画面に映るのは、ルリの顔ではなく、銅鐸のイラスト。
「オモイカネ?」
『ルリさんからのメッセージです。”今は会いたくない、話は、いずれまとめて地球で聞く”だそうです』
「……」
『事情はあるでしょうけど、あまり、ルリさんを悲しませないでください』
「ああ、わかってるよ、オモイカネ。……ありがとう。ルリちゃんを、よろしく」
 ウィンドウに向かって頭を下げると、カイトは自室へと向かう。その両肩が、心持ち力無く落ち込んでいるように見えるのは、決して気のせいではないだろう。カイトが自室へ消えるのを見届けると、オモイカネもまた、ウィンドウを消した。
『相手を思うが故に、すれ違い、ぶつかり合う……。難しいですね』
 消えゆく寸前、見るものもいないというのに、ウィンドウに文字が流れた。
 ナデシコBは、その進路を母港のある地球へと向け、ゆっくりと進んでいった。
 
 
つづく

後書き
 ここのところ、盛大に続きが遅れまくっております、たのじです(苦笑)
 忙しくって、書く時間がとれなくて、それでもどうにか書き上げました。しかし、ゆっくり書いただけに、話としてはよくできたと思っております。
 ですから、遅れの方は許してください_(__;)_
 ここまで来て、ようやく展開が『オリジナル』と言えるようになったと思います。
 どうか、このまま最後までお付き合いください。
 それではまた。
 
 最後に、この作品を掲載して下さった河田さん、本当にありがとうございました。
この作品はNetscape Communicator4.75、Netscape6、Internet Explorer5.5で表示を確認しています。
「機動戦艦ナデシコ」はジーベックの作品です。

御意見、ご感想はこちら:tanoji@jcom.home.ne.jp