機動戦艦ナデシコ
Digital Fairy Tales
〜in "The prince of darkness”〜
作：たのじ
第五話 『きずな』のかたち 後編
＜２２０１年８月某日 晴れのち、夕立＞
ああ〜、もう、暑ッ！ こっちの夏って、どうしてこう暑い上に湿度が無闇に高いのかしら？
せっかくお土産たくさん持ってきたのに、ホウメイさんの店はなかなか見つからないし、日差しは強いし……。日焼けしちゃうじゃない！
……おもわずオオイソに帰りたくなっちゃうけど、でも、ルリルリの顔くらいは見ておかないとね。プロスさんからはナデシコＣに乗らないか、って言われたけど、ユキナが待ってるし。
それに何より、あの子にはカイトクンがついてるし……。もういい男になった頃だから、任せて問題ないわよね？ ちょちょっと顔出して、元気付けてあげればいいでしょ。
……にしても、やっぱり重いわ。トランク一杯は女の細腕にはきついわよね……。お土産、もっと絞ればよかったかしら？
ハルカ・ミナト
彼らが地球に下りて、三日目の朝。天気は快晴、今日も夏真っ盛りの八月の太陽が、早朝から地面にくっきりとした影を映し出す。
それでも、朝の空気はまだ清涼感に満ち、まだ空気が重く感じられるような湿気も少なく、渡る風には清涼感が満ちていた。……一部を除いて。
そして、その一部であるルリの目覚めは、爽やかとは程遠かった。
「はぁっ……！」
肺から空気が押し出されたような、小さな叫びがヒカルの仕事場に響く。死屍累々、という表現がぴったりの部屋の中には、机に突っ伏して眠るヒカルとハーリー、椅子にもたれかかったまま、口を大開にして眠るサブロウタがいた。
一人目覚めたルリは、我知らず、喉元にたまっていた汗をぬぐう。べったりした感触が、着替えが出来なかったために汗が染み込んだ服と相乗効果で気持ち悪い。
「（……シャワー、浴びたいな……）」
汗の臭いが気になるが、着替えがないのでそうもいかない。これは、一度宿舎に帰らないと、などとつらつら考える。
……そうしていれば、悪夢の内容を反芻せずに済むから。
かつて、幾度となく見た夢を、昨夜（？）は久しぶりに見た。
未明の暗闇の中を、バイクを飛ばして駆けつけたヒカルの担当に原稿を渡し、とんぼ帰りする背中を見送って、疲れきってそのまま眠った。
硬い机に寝苦しさを覚えたのも一瞬のこと、緊張感から開放された疲れきった意識は、水の中に沈むように、ごく自然に眠りに落ちた。
だというのに夢を見たのは、自分が不安になっているからだろう。三年前に失った……、と思っていた何よりも大切な家族。それから仲間。
その当時は、いなくなった三人の夢を見て、何度となくうなされた。夜中に飛び起きたことだって、一度や二度ではない。
……しかし、そんな時にはいつも彼がそばにいてくれた。
――いや、あんまり寝苦しそうだったから、空調でも故障したんじゃないかと……。
そんな下手な言い訳をしながら、汗でびっしょりの自分に冷たいタオルを差し出してくれた。さすがに、一緒に寝てください、と言えるほど子供ではなかったので、添い寝してもらって悪夢から逃れることは出来なかったが、この人がそばにいてくれると思うと、安心して寝直すことが出来た。
その彼が、カイトが、自分に隠れて何かをしている。それも、命にかかわるほど危険なことを。アマテラスで一度ロストした時には、必死に押さえはしたけれども震えと冷たい汗が止まらなかった。
これ以上不安なことが、あるはずがない。だから、あんな夢を見たのだ。
――被弾し、大破して倒れ伏す黒い機動兵器。そのコックピットの中で、焼かれ、灰になって絶命するアキト。遺跡に捕われたユリカ。その石化した体が、内部から亀裂を生じて粉々になる。
そして、カイト。白いプリンセスガードの装甲が、群がる敵機の攻撃に一枚、また一枚とはがされていく。露わになったなったコックピットには、血を流して苦しむカイトの姿。助けを求めるように差し出された手に応えようと、ルリが手を伸ばしたそのとき、何か禍々しいものが、腕をカイトに振り下ろし――。
飛び散る何かを見たと思った瞬間、ルリの意識は絶叫して、目を覚ました。
「……縁起でもない」
まとわりつく汗で湿った髪の毛と、不吉な妄想を振り払うと、ルリは椅子から立ち上がった。十代の体でもこの体勢で寝るのは効くとみえて、腰骨と背骨がいやな軋み音を立てる。
さあ、あんな光景を現実のものとしないためにも、仕事をしなければならない。ヒカルで時間を食った分、今日は忙しくなりそうだ。
「サブロウタさん、ハーリーくん、ヒカルさん。起きてください。時間は、あんまりありませんからね」
まずは、誰から回ろう――？ 呻き声を聞きながら、ルリは考える。効率的に人集めをするには、目的が固まっている場所を回ればいい。リストの中から、適当な場所を見繕って……。
くぅ、と、と小さな音がした。
「（……でも何よりもまず、どこかでシャワーを浴びて、着替えて朝食……）」
血が回り始めて、空腹を訴えた生理現象を、幸いにして誰にも聞かれなかったことに感謝しつつ、ルリは予定を速やかに変更した。
上役、というものは、部下に仕事を押し付けることができる存在である。それはまったく持って正しい……、が、本当に仕事ができる上役というものは、部下に仕事を押し付けつつ、自分もそれと同等か、それ以上の仕事をしているものである。
そして、ここには本当に有能な士官たちが揃っていた。その数は僅かに四人。しかし、並みの士官が一個中隊集まっても出来ないことを、西瓜をかじりながらやってのけてしまう、本当のエリートたちである。
その一人が、口をすぼめて、種を器用に空の皿へと吐き出した。
「いやはや……。今回の騒ぎで、統合軍も連合内部もガタガタですな」
「ま、当然でしょう」
ムネタケ中将の述懐にアキヤマ少将が西瓜に塩を振りかけながら、合いの手を入れる。 ここは連合宇宙軍司令部、宇宙軍総司令ミスマル・コウイチロウ大将の執務室。そこに、ミスマル大将以下、ムネタケ・サダアキ中将、アキヤマ・ゲンパチロウ少将、そしてアオイ・ジュン中佐が首を揃えて西瓜を頬張っていた。
「そのおかげで、来月に迫っていた予算折衝もお流れ。またしばらく、首が繋がりますなぁ」
「これは、我々にとっては運が良かった、というべきでしょうかね」
アキヤマとムネタケが冗談交じりに笑い合う。さすがに少し場を引き締める必要性に駆られたのか、コウイチロウが水槽の熱帯魚をバックに、重々しく口を開いた。
「で、敵の動きはどうなっているのかね？」
「はい！」
一心に西瓜にかぶりついていた顔を引き締め、ジュンが応える。手の中の西瓜は、しっかり抱え込んだままだったが。
「……敵、“火星の後継者”は、現在火星極冠遺跡を占拠。草壁の主張に同調する者がぞくぞくと終結中」
ジュンは報告しながら通信ウィンドウを開いた。そこには、“火星の後継者”によって無差別に流されているプロパガンダ放送が映っている。火星極冠遺跡“イワト”を囲む艦隊。そして、アップになった映像の中では、草壁と統合軍の制服を着た将校が、がっちりと握手をしている。
「……その数は現在までに、統合軍のおよそ三割にまで達しています」
「連合内の非主流派の国々にも、非公式ながら支持の動きがあります」
ジュンがまとめた報告を、ムネタケが脇から補足する。彼の方は、長年の軍務の合間に政官界に張り巡らせたパイプから情報を収集していたらしい。
「宇宙軍は大丈夫なんですか？」
「……まあ、宇宙軍からは同調しようにも人がいないからねぇ……」
何気なくアキヤマが発した問いに、コウイチロウは実にしみじみとした口調で答えた。どことなしか、苦笑しているようにも見える。ムネタケも、それに同調するように相槌を打った。
「よかったですナァ」
「よくありません！」
あまりにのんびりとしている上司たちに、ジュンは我慢が出来なかったらしい。大きく身を乗り出して、口から西瓜の種を飛ばしながら言い募る。
「向うは反逆者なんですよ！ なんでみんな、そんなに心優しいんですかッ！？」
ジュンの絶叫は、あっさりと草壁に同調した統合軍の将校たち、そして安易に“火星の後継者”支持を表明した政治家たちに向けられているのだろう。彼の基準からすれば、元より草壁支持は論外の上、テロという行為に手を染めた“火星の後継者”は鎮圧すべきテロリストでしかありえないのだ。
それは、民主主義国家の軍人としての、ジュンのバランス感覚の確かさを現している。かつてナデシコで鍛えられただけのことはあって、がちがちなだけのエリートではない。
まだ言い足りないジュンの勢いに苦笑しながら、アキヤマが応じた。
「ま、この手のテロは、何かカッコよく見えるからなぁ。単純明快、正義は我に有り！ って感じで」
「そんな……！ 無闇に犠牲を出して、何が正義ですか！ ホシノ少佐が持ってきた資料では、奴ら、人体実験だって……！」
まだまだジュンの演説は続きそうな気配だったが、そこに入った一本の通信がそれを止めた。
『アオイ中佐、外線です』
「え？」
「ハァーイ！ ジュンちゃん、お元気ィー！？」
相手を質すまもなく開いたウィンドウには、ジュンの彼女――彼本人は否定しているが、周囲はまったく取り合っていない――にして故・白鳥九十九の妹、今は元ナデシコクルーのハルカ・ミナトに引き取られているシラトリ・ユキナであった。元から元気な少女であったが、高校に上がる年になって、更に健康な愛嬌とほのかな色気を振りまくようになっていた。
そんなユキナに、ジュンは控えめに言っても振り回されており、
「君ィ！ な、なんで取り次いだんだ！？ この子は軍と何の関係も……！」
『……ごく親しい方から、至急の用、とのことでしたので』
「うっ……」
『えっへへ〜ん♪』
受付嬢に抗議したところで、さらりと受け流されてしまうのだった。
それは、幾度も司令部に私用電話をかけられ、その度に取り次いでいればそうもなろう。
『ところでアオイさーん？ ミナトさん、そっちに行ってるよネ？』
露骨に目をそらして西瓜にかぶりつくジュンの態度をまるで気にせず、ユキナは本来の目的を口にした。その単刀直入ぶりは、木連時代からまったく変わっていない。
「え……？ さ、さぁ？」
ジュンは、重ねて露骨にとぼけた返事をする。が、それでは肯定しているのも同じことだ。人並みに鋭いユキナは、確実に嘘の気配を嗅ぎ取った。
『とぼけたってムダよ、ムダ！』
実のところ、ミナトはナデシコＣのメンバーに選ばれており、プロスペクターが前日のうちに連絡をとっていた。当然それはジュンも承知しているが、ことが軍機に関わるため、おいそれと口に出すわけにもいかない。
かといって、はぐらかそうにもジュンはそういった誤魔化しや言いくるめはを苦手としている。案の定、問い詰めるユキナに言葉の端々を捉えられて、着実に退路を絶たれていた。
『ねー、お願い、教えて！』
「うう……」
そして、逃げ道を全て塞いだ上での泣き落としである。ジュンはユキナの、というか、女性の泣き落としには全く抵抗力がない。かつて、ユリカ一筋純情一路の青春を送ったきた影響であろう。女性の扱いというものに関する経験が、全くないのだ。
唯一身近だった女性は、標準から遥かに外れた存在であることだったし。
このように、今にも一般人に軍機を聞き出されようとしているジュンだったが、周りの将官たちには、それを止める気配が全くなかった。
それどころか、二人の邪魔にならないようにという配慮か、修羅場を特等席で見ようという野次馬根性か、西瓜と皿を手にして三歩下がって見ているありさまである。
「……！？ こらぁーッ、そこぉーッ！ 見てないで止めてくださいよッ！！」
コウイチロウたちの好奇の視線に気付いたジュンが声を張り上げるが、物見高い中年たちは、額をつき合わせてしみじみと語るだけだった。
「アオイ君もそれなりに出来るヤツなのだが、いわゆるイイ人過ぎてなァ……」
「わかります、わかります」
「女子高生に手玉に取られるようでは、いけませんなァ」
「ああ、もうっ！ 余計なお世話ですッ！！」
……結局、ジュンはあらいざらい吐かされた上に、司令部にやってくると聞かないユキナの出迎えをする約束までさせられたのであった。
――夏の空 ジュンにも遅い 春の風――
読み人 コウチャン
そうして、上役たちが仕事……、と言い切ることに抵抗を覚えるような騒ぎに興じている頃。ルリたちは、彼らなど比較にならない勤勉さで人集めに駆けずり回っていた。
お供にしたがっているのは、昨日同様サブロウタとハーリー。カイトはまだ到着に時間がかかるとのことで、この場にはいない。その連絡を受けた時に、ルリの目つきが急角度で悪くなったところを、側の二人は確実に目撃して、後に語った。
『あの時ばかりは、艦長のことを本気で怖いと思いました』
『……カイトのヤツ、自由を売る相手を間違えたんじゃねぇか？』
閑話休題。
しかし彼らの勤勉さも、疲労には適わない。朝から足を棒にして歩き回った結果、昼を回る頃には全身が休息を訴えていた。ルリはそれでも涼しい表情を崩さなかったが、サブロウタはあからさまに疲れを顔に出している。
ハーリーは見栄なのか意地なのか、とにかく元気な姿をアピールしていたが、遊び疲れてこてんと寝込む子供のような危うさがあった。
「……少し、予定を変えましょうか」
「へ？」
「そっスねぇ」
二人に見下ろされているハーリーは、ルリの意図がつかめなかったようだ。それでも彼は、疲れた体に鞭打って、彼女の後ろを一心に追って行く。
幸いなことに、近場に休憩を兼ねて食事も可能、更にこのあと訪問予定だった絶好の場所がある。ルリは、少々予定を変更すると、暑さにだれている二人を連れて目的の場所、大衆食堂『日々平穏』へと向かった。
そして程なくその場所へ辿り着いた三人だったが、昼のランチタイムも終わってしまったのか、無常にも『仕込中』の札が出ている。
「艦長〜。どうしましょう〜？」
その札を目にしたハーリーが、流石に疲れた声を出す。ところがルリは、そんなものはどこ吹く風と、全く気にせず店の扉をくぐった。
「あ、艦長！」
「なァに驚いてんだよ、ハーリー？」
「だって、仕込中って……」
「あのな、俺らはここに飯を食いに来たんじゃなくて、勧誘に来たんだろうが。他の客がいないなら、かえって好都合だっての」
呆れた様子で答えるサブロウタに、ハーリーがようやく合点がいった表情を見せた。
一方のルリは、それほど広くはない店内に、目的の人影を早くも見つけていた。
「あー、すいませんね。今、仕込中なんですよ」
店内ただ一つの人影は、カウンターの奥の厨房で仕込作業の真っ最中のようだ。それでもルリが入ってきた気配に気付くと、手を休めてカウンターから顔を覗かせる。
「そういうわけですから、六時過ぎに……」
「お久しぶりです、ホウメイさん。お店、繁盛してるみたいですね」
「あんた、ルリ坊！ ルリ坊じゃないか！」
「はい、ルリです」
多少営業用だった顔に、満面の笑みが浮かぶ。かつて三年前、ナデシコ食堂を完璧に仕切って見せた、気のいいホウメイの笑顔だ。
「ほら、そんなとこにいないで入っといで！」
「はい。……ハーリーくん、サブロウタさん、いいそうですよ」
ルリに続いて入ってきた二人を見て、ホウメイは意外そうな表情を浮かべた。手招きしてルリを呼び寄せると、小声で耳打ちする。
「あんた、今日のお供はカイトじゃないのかい？」
「……ええ、ちょっと事情がありまして」
問われた内容に、ほんの少しだけ、ルリの表情がひくついた。外から一見しただけでは、到底気付かないような変化だったが――。
ルリの無表情も、ホウメイには通用しなかったらしい。それだけで察したホウメイは、苦笑しつつも三人に席を勧める。
「ほら、なんでも好きなものを言いな。すぐに作ったげるからさ」
「すいません、お休み時間に」
「あ、じゃあぼく、火星丼を！」
「俺、パエリアね」
「あいよ！ ルリ坊は何にする？」
ルリの答えを予想しながら、それでもホウメイは尋ねた。
そしてその答えは、予想と寸分たがわないものだった。
「……ラーメン、お願いします」
ルリとホウメイは、視線を交わして小さく微笑んだ。
「……えーっと、この人も不参加。合計二十人、と」
ハーリーの携帯端末に表示された人物のファイルに、大きく『不参加』の表示が重なる。その人物は、つい先程参加を要請しに行ったばかりの、元ナデシコ整備班長、ウリバタケ・セイヤだ。
ナデシコを降りて以来、セイヤは町の技術者として機械の修理・（違法）改造などを生業とする、かつての生活に戻っていた。一見不真面目で趣味に生きる男――趣味うんぬんはある意味正しいのだが――に見えるが、彼はその一方で義理人情に厚い。
そんな彼だから、今回の作戦も協力してくれる可能性は高い、とルリは見ていた。
しかし、セイヤの工房に赴いてみれば、余程のことがない限り出歩かない彼は『町内会の寄り合い』とやらで不在。応対してきた彼の妻のオリエの言葉は、何か奥歯に物が挟まっているような様子で、いつ戻るのかを聞いても要領を得ない。
二言三言言葉を交わしたところで、ルリはこれまで参加を断られた時と同様に、早々にそれ以上の交渉を諦めた。セイヤの脱落は、整備班に大きな穴があくことを意味するため、正直なところ大いに落胆したのだが……。それを表に表さずに、彼女は彼の工房を後にしたのだった。
「歴戦の勇士も、また一人脱落、と」
どこか弾んだ声で、ハーリーは処理を進める。その様子に、サブロウタがしかめ面を浮かべるが、その表情を向けられた当人は気付いていない。
「はい、火星丼お待たせ」
「あ、すいません」
ホウメイ特製の火星丼が、食欲をそそる香りを振りまく。ハーリーはいそいそと端末を片付けて、早速スプーンを手にとった。
「でも艦長、結構集まり悪いですよねー。栄光のナデシコクルーたちも、今じゃ平和に慣れちゃった、ってことでしょうか」
「おいハーリー、お前、もう少し言葉を選べよ。」
おもむろに火星丼の征服に取り掛かろうとしたところで水を差され、ハーリーはルリを挟んで反対側に座っているサブロウタに、恨めしそうな視線を向けた。
パエリアをあらかた片付けたサブロウタは、お冷をちびりちびりと飲みつつ、ハーリーに少々剣呑な視線を投げかけている。
「ですけど、サブロウタさん！」
「なんだよ？」
サブロウタに対抗するように、力のこもった視線で睨み合いを始めるハーリー。しかし、それ以上サブロウタに口答えすることはせずに、今度は一人我関せずだったルリに矛先を向ける。
「……艦長。お聞きしますけど、そんなに昔の仲間が必要なんですか？ だいたい勧誘した人たちだって、断ら」
「必要」
断られてばかり――と続けようとしたところで、それ以上言わせてもらえずルリに一刀両断される。
普段ならここで引き下がるところだが、今日のハーリーは食い下がった。
ルリは、そのハーリーに視線を向けようともせずに、ラーメンをすする。
「べ、別にいいじゃないですか、ぼくたちだけでも！ ……まあ、エステバリスのパイロット補充はよしとしましょう！ 流石にサブロウタさんだけじゃ辛そうですし、命令無視をするような人がいたって戦力になるかどうか怪しいですしね！」
「……」
あからさまに誰かを当てこすった台詞だが、ルリは気にも留めない。ただ、頬が僅かに引きつっていた。
「艦長のサポートはぼくだって出来ます。第一、ナデシコＣはＢの後継でしょう？ なら、ワンマンオペレーションシステムを使えば、艦長とぼくだけで十分のはずです！」
ハーリーは、無言で食事を続けるルリに、怒涛のように語り続けた。
「ぼくたちは連合宇宙軍最強のチームなんです！ 引退した人たちを引っ張り出して、オールスター勢揃いみたいなことをしなくてもいいでしょう！？」
「ハーリー、いい加減にしろ」
サブロウタに止められても、ハーリーは止まらない。そして、そこでサブロウタは気付いた。
ハーリーの言葉は、一見他人が自分の領分踏み込むことを嫌がっているように聞こえる。ところがその表情には、それとは別の必死な勢いと、うっすらとした陰が見える。
それが何かに気付くには、サブロウタはまだ若かった。子供の真っ直ぐすぎて歪みきっていない陰を見抜くには、わずかばかり経験が足りなかったのだろう。
それに気付いたのは、カウンターの向うのホウメイ一人だ。
「ねぇ、艦長！ 答えてくださいよ！」
「ハーリー、お前……」
「ぼくは、そんなに頼りないですか！！」
耳元の怒鳴り声を右から左へ通過させつつ、ルリは丼のスープを飲み干した。
「……ホウメイさん、おかわり」
ハーリーの表情がくしゃりと歪む。
そこに――なんというタイミングと言うべきか――、まだ『仕込中』の看板が出たままのはずの扉を開いて、最後の一人がやってきた。
「ああ、やっぱりここにいたんだ」
とってつけたような台詞を口にしながら、扉をくぐる。口調と表情がまるで噛み合っていない、三文役者ぶりだ。
「ルリちゃん。遅れてごめん。それからプロスさんから連絡があって、整備班と生活班の人達、十人ほど参加してくれるって……」
噴出した汗をハンカチでぬぐいながら、カイトは後ろ手に扉を閉める。そして、ハーリーの隣にカイトが腰を下ろした、その瞬間。
「うわぁーん！」
ハーリーが、爆発した。
椅子を蹴倒し、扉を叩き付けるように引き開けると、表に出していた『仕込中』の看板を載せた椅子も跳ね飛ばして、素晴らしい勢いで駆け去って行く。
サブロウタが後を追いかけるが、遅れて店の前に出たときには、既に視界にその姿はなかった。
「ハーリー！ ……痛くないのかね、あいつ」
肩をすくめながら、路上に転がった椅子と看板を回収する。その様子と、店の中の空気を見回し、カイトはおずおずと口を開いた。
「……タイミング、悪かったかなぁ？」
「いえ、丁度いいところです。聞きたいこともありますし」
ラーメンのおかわりをすする手を止めて、ルリは真っ直ぐにカイトを見つめた。それは、昨日までの、どこかよそよそしい眼差しではない。真摯な、一切の逃げを許さない、それでいてどこか怯えたように揺れている、そんな視線だった。
カイトから視線を外すことなく、ルリは扉をくぐろうとしていたサブロウタを制止する。
「……サブロウタさん、ちょっとハーリー君を探しに行ってください。見付からなかったらいいですから。そうですね……、一時間くらい」
大雑把な内容だが、一部やけに具体的な指示を受けたサブロウタは、ルリを見て、そしてカイトを見て、再び肩をすくめた。
「了解しました、艦長殿。……ではこれより、タカスギ大尉、マキビ少尉の捜索に当たります！」
やたら形式ばった敬礼を残し、サブロウタは踵を返して表へ出て行く。その上で、彼はカイトに激励の――どこか面白がっている色も含まれていたが――眼差しを送るのを忘れなかった。
扉が閉められ、表の喧騒が遮断されると、店内はにわかに静寂が優勢になった。聞こえる音は、仕込をしているホウメイの包丁の音、煮込まれるスープが立てる音、時計の音と向かい合う二人の呼吸だけだった。
注文したラーメンが伸びるのもかまわず、ルリはカイトから視線を外そうとしない。
対するカイトは、泰然としているようだが、その実背中は鏡に囲まれたガマガエルも驚くほどに汗まみれだった。
「……」
「……」
「……ルリ坊、片付けるよ」
十分ほどもそうしていただろうか。頃合と見たホウメイが、伸び切ったラーメンの丼を回収したことを機に、ついにルリが口を開いた。
「カイトさん、何か言うことはありませんか？」
「ええと……」
カイトは、問い詰められながらも、正面から話ができるこの状態を歓迎していた。まだ口には出来ないことを山ほど抱えている身だが、アマテラスでの行動を謝りたおすことはできる。
ところが、この場を切り抜けるためならば、額が擦り切れるまで土下座するというカイトの覚悟は、続くルリの一言で霧消してしまった。
「……ちなみに、下手な言い訳を聞きたいわけじゃありません。あなたがしようとしている、『本当のこと』です」
「な……」
強い口調で糾弾されれば、まだ反射的にとぼけることも出来たかもしれない。しかし――。
「『家族』の間で……、隠し事は、無しですよ？」
こんな、怒りではなく、哀しみを押さえつけているような、必死な表情をされたら……。
「（……反則だ。どうにも出来ないじゃないか……！）」
激しい感情とこれまで関わってきた『計画』に挟まれて、葛藤するカイト。
そしてルリは、感情の噴出を押し隠そうとする表情の下で、必死にそれと戦っていた。
ルリとカイトを繋ぐ絆。それは、改めて観察してみると、驚くほどに脆くか細いものだった。
出会ってから、たったの三年。そのうち一緒に暮らしていたのは、一年を越すかどうかという日数だけ。
互いが一緒に居ることを望み、『家族』として過ごしてきた。
それでも、血の繋がりという大前提の無いにわか作りの『家族』は、一緒に居たという、それ以上でもそれ以下でもない繋がりは、僅かな綻びが生じればあっさりと途切れてしまいかねないのだ。
カイトは自分に隠れて、おそらく重大な、何かに関わっている。それも、死んだと思っていた『あの人』たちに関わる何かに。
自分だけが蚊帳の外に居た――。その想像は、ルリにとっての恐怖以外の何者でもない。自分が、彼らの『家族』ではなかった、そんなはずは無いのに、そう思えてしまう。
もしこのままだったら、それ以上に恐ろしいことになってしまう。
自分が、彼らのことを……、『家族』ではない、と考えるようになってしまいそうで。何よりもそれが、ただひたすらに、怖い。
「（何か……、何か言ってください、カイトさん……！）」
膝の上で握り締めたられた小さな両手、その指の関節が白くなるほどに、力がこもる。
沈黙の時間は、長かったのか、短かったのか。
少なくとも、二人にはとてつもなく長い沈黙を挟んで、カイトが小さなため息をついた。
「いつ気付いたの？」
結局、カイトは折れた。うすっぺらい謝罪の言葉は、もう口に出せない。代わりに、真剣な、言葉を選んだ短い問いを口にした。
そして、自分に対して真剣になったカイトに、ルリは控えめに言って泣き出しそうなほどの安堵を覚えた。
――大丈夫、この人は、私をしっかり見ていてくれる。だから、私も。
「アマテラスでの攻防戦の、あの時の行動。それから、オモイカネのログを見たときです」
いつのまにかからからになっていた喉を、ホウメイが差し出してくれたお冷で湿らせる。
「カイトさん、いくら管理者権限を持っていても、アクセスログを消さない限り、誰がいつオモイカネにアクセスしたのか一目で判るんですよ」
「……うっかりしてたよ」
どうやら自分の些細なミスで、極秘のはずの作戦がばれてしまったらしい。カイトは苦笑するしかなかった。
アキトのアマテラス襲撃を手引きした時、オモイカネにユーチャリスとの直通回線を確保させた。ほぼ間違いなく、あの時の操作が原因だろう。機動兵器の操縦や火器管制システムには強くても、簡単な端末操作の仕組みは理解できていなかったカイトの凡ミスである。
「それで、何をするつもりなんですか？ 何が、この事件の裏で起こっているんですか？それに……」
……あの人は、なぜ私たちのところに帰ってきてくれないんですか？
ホウメイがいることで遠慮しているのか、ルリは途中で言葉を飲み込んだ。
しかし、他でもないカイトが、飲み込まれた言葉を聞き逃すはずが無い。
「……」
唇をかみ締め、爪が掌に食い込むほどに拳を握り締める。
言ってあげたい。自分がやっていたこと、アキトが生きていること、あらいざらいルリに教えてやりたい。
都合のいいことに、アカツキからもアキトからも、この件に関して口止めなどは言い含められていない。だから、ここで知っている限りのことを話してしまってもいい……。はずだ。
「カイトさん……」
それなのに、なぜ話せない？
話してしまえば、万が一の時、ルリにも類が及ぶからか？
ルリには、手を汚すようなことをして欲しくないから？
そんな理由では、多分、ない。それに、ルリもそんな答えでは納得しないだろう。彼女が求めているのは、カイトが隠している事の真相だ。
それがただの陰謀ではなく、ルリが家族と認めている人、アキトが関わっているからこそ、そこから疎外されたくないために、真実を知りたいと渇望している。
カイトは、結局それ以上言う決心はつかなかった。ただ、絞り出すように、言い訳とも取られそうな言葉を口にすることが出来ただけだった。
「……正直、どう話したらいいか、よくわからない。黙っているつもりだったから、僕自身、すぐに話せるほど整理も出来てない」
「なら、せめて……」
アキトのことだけでも、生きているのならどこにいるのか――。
その問いが言葉になる前に、カイトはルリの唇を人差し指でそっと抑えた。
「もうこれ以上嘘はつきたくないから、今は言えない。明日まで……。三回忌の日まで、待ってくれる？ そうしたら、僕が知っていることは全部、話すよ。ルリちゃんが知りたがっていることも、多分聞けると思う」
もちろん、それでルリが納得するはずがない。カイトの手を振り払って、更に問い詰めようとして……。
「……！」
しかし、それ以上のことは出来なかった。カイトの目を、見てしまったから。
きっと今、自分は酷い顔をしていたと思う。結局肝心なことは何も話してくれないカイトに憤って、悲しくて、くしゃくしゃな顔をしているに違いない。
それでも、一目でそれとわかるほど、深い苦悩と激しい懊悩を抱え込んだ瞳を見てしまっては、それ以上の追求は、とても出来なかった。
カイトがこれほど苦しんでいる姿を見るのは、実に三年ぶりだ。あの時、火星で静かに泣き崩れたその姿が、今のカイトに重なる。
「……わかりました」
ルリは、ため息をついて矛を収めた。そして、おもむろに白いハンカチを取り出して、カイトの口元に当てる。
何時の間にか、噛み締めた歯が唇を傷つけ、血を流していた。ハンカチが、カイトの血で薄い赤に染まる。
「ルリ坊、カイト。そろそろハーリーを迎えに行ってやった方がいいんじゃないのかい？」
「……はい、そうします。ホウメイさん、ラーメン、おいしかったです」
「次に来た時は、カイトもきちんと食ってってくれよ？」
「ああ、はい。楽しみにしてます」
幾分表情が柔らかくなったルリが、カイトの先に立って店を出て行く。
その背中を、ホウメイは苦笑とも微笑ともつかない表情で見送った。
「……やれやれ。ルリ坊も一丁前になったんだねぇ。カイトが尻に引かれる日も遠くないね、ありゃ」
それに、カイトも――。
口の中で呟いて、ホウメイはもう一度、慈しみの情がこもった笑みを浮かべた。
そして、その頃……。
プロスペクターの勧誘を機会に、ルリの顔を見てやろうと大荷物を抱えてやってきたミナトは、泣きながら街を徘徊するハーリーに遭遇。さらに。
「うわぁーん！！」
「あ、あらー？」
出会った早々に泣き出してしまったハーリーへどう対処すればいいものか、困惑していた。
道行く人から注がれる視線が突き刺さり、身に覚えの無いはずの罪悪感と居たたまれなさに、教師として磨きをかけた対人能力も、空回りしてしまう。
「ねぇ、ちょっと、ボク？」
慣れない街並みに迷って蓄積していた精神的な疲れと、炎天下に重い荷物を運んできた肉体的な疲れ、目の前の子供の泣き声。全てが自分を意図的に苛んでいるような気分になる。
――もう、どーしたらいいのよ？
ミナトは、世の無情に、少し涙目になって空を仰いだ。
街中で出会った少年が、ルリの部下であり弟的存在であるハーリーである、ということに気付いてからは、話は早かった。
精神的に立ち直ったミナトは、ユキナで培った――本人が聞いたら頭から湯気を噴出すだろうが――子供をいなす腕前を発揮し、ハーリーをなだめ、少しばかり元気付けて迎えのルリに引き渡すことが出来た。
迎えに来たルリの隣にカイトがいたことには、少しの安堵とハーリーに対する気まずさを覚えたのだが……。
二人の表情を見て、少しばかり話を聞くと、ミナトは笑顔を浮かべながらも、内心で頭を抱えざるを得なかった。
「本当は、ルリルリたちの顔を見るだけで、すぐに帰るつもりだったんだけどね……」
その夜、閉店後の日々平穏で、ミナトはホウメイと二人、差し向かいでグラスを傾けていた。ちなみにつまみは、ミナト持参の甘味である。
「あんた、乗るつもりなのかい？ ナデシコＣにさ」
「カイトくんがいるから、大丈夫かな―、と思ってたんだけど……。なんだかちょっと、そうでもないみたいね？」
「そうだねぇ。ルリ坊は、かなり無理してるよ。一生懸命隠してるけど……。艦長としての責任、任務の遂行、敵は強い……」
虚空をみつめて、ホウメイは指折り数える。ミナトは、そんな彼女の横顔から視線を外して、手の中のグラスをゆらゆらと弄んだ。
「こういう時に、あの子もリラックスできればいいんだけど……。艦長みたいに、ね」
「ああ……」
旧ナデシコのクルーにとって、『艦長』と言えば一人しかいない。今は亡き、底抜けに明るくて楽天的で前向きだったその人を思い、二人はしばし黙祷する。
再び口火を切ったのは、ミナトだった。
「……でも、ホウメイさん？ ルリルリが悩んでるのは、それだけじゃないでしょ？」
「なんだ、知ってたのかい」
「あの二人を見れば、おぼろげにでもわかるわよ。二人とも、若いから」
二人は、頷きつつ苦笑し合う。
「カイトも、なんだかんだ言って男さね。女に心配させるのは、どこの男も同じだよ」
「あの優等生クンも、何時の間にか悪いコになってたんだ。ルリルリにあんな顔させるなんて、一体何をやったのやら……」
仮面のような表情の奥に、小さな体には不相応な苦悩を抱え込んだルリの姿を思い出す。カイトも色々背負っていたようだが、優先されるべきは少女の心、というわけで彼のことは心の隅に追いやっておく。
「でもま、あの二人は、やっぱりお似合いだよ」
澄んだ氷の音を楽しんでいたホウメイが、ぐっとグラスをあおった。彼女らしい、実に男前な飲み方だ。
「ルリ坊は変に大人だったけど、あいつのおかげで年相応に悩むようになった」
「……それに、カイトくんはカイトくんで、子供みたいな目をしてたのに、いつのまにか、大人の男の目になってたしね」
空いたグラスに酒を注ぎ、溶けた氷の変わりに新しいものを放り込み、二人の酒盛りは続く。
二人は談笑を交わしながら、着々と杯を重ねていく。
ただ、二人の表情は、とても酔いを楽しんでいるとは思えないものだった。時折訪れる沈黙と、不意に浮かぶ重い表情が、再会を祝う酒の席にはふさわしくない空気を醸し出す。
やがて、ボトルが空になる頃、ミナトが意を決した表情で最後の一杯を飲み干した。
「ホウメイさん、あたし……。ルリルリといっしょに行くわ」
「……そうかい」
その一言が、ミナトの決意表明だったのだろう。ホウメイをそれをさらりとかわして、こちらも最後の一杯を飲み干す。小さくなった氷が、グラスの中でからりと音を立てた。
「ホウメイさん？」
行かないの？ とミナトは視線で尋ねる。自分に劣らずルリを気にかけていたはずのホウメイが動かない、それが意外だったのだろう。
当のホウメイは、ミナトの視線を正面から受け止めなかった。横顔に視線を感じながら、ゆっくりと口を開く。
「あたしゃ、別件があるんでね」
「別件？」
「そう、別件さね。若者には若者の、年寄りには年寄りの仕事があるんだよ」
その夜、ラピス・ラズリは、見慣れない地球の夜空を眺めていた。
――ユーチャリスの艦橋から見える景色と、全然違う――。
明日は、アキトとユリカの三回忌。旧ナデシコのクルーにとって、忘れがたい日である。
しかし、明日のその日がそれだけではなく、別の意味をもたされていることを知る者は、まだ極僅かしかいない。
それを知る者の一人であるラピスは、その企みが成功するように、そのためにこれまで宇宙で活動してきた。表情に乏しい彼女から、その意図しているところを窺い知ることは難しい。
今夜も、空を見上げながら何を思っているのか。一見しただけではとても読みきれない。
ただ、空に向かい、立ち尽くすその姿は、無心に、ただ無心に、何かを祈っているように、見えた。
つづく
後書き
まずは、この作品を読んでくださった&下さっている皆様に百万の感謝を。
今度こそ、久しぶりに、約束どおりに書き上げましたぁっ！
……話はいかにも中途半端でアレですが（苦笑）
次回はまたちょっと時間が空くかと思いますが、よりクォリティの高いものを書くべく頑張りますので、のんびりお待ちください。
ではまた。
最後に、この作品を掲載して下さった河田さん、本当にありがとうございました。
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「機動戦艦ナデシコ」はジーベックの作品です。
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